留学するなら公衆衛生学修士(MPH)ではなく理学修士(MSc)へ行け

公衆衛生学

こんにちは、総合医です。

臨床医の先生方の間でMPH留学の人気が高まってきていますね。

私も臨床研究に興味を持った事をきっかけにシドニー大学に留学し、MPHの学位を取得しました。

入学当時はMScの事を知らなかったので、MPH以外受験しなかったのですが、もし今当時の自分に戻る事ができるならばMScを選択したかもしれません。

というわけで、今回は公衆衛生学修士と理学修士(MSc)の違いについてお話をしてみたいと思います。

MPHとMScのどちらに留学すべきか?

結論から言えば、自分の興味の幅によります。

臨床研究に興味を持ち、疫学や統計学を勉強するためだけに修士課程に留学するならMScの方が断然良いです。

MPHでは疫学・生物統計学以外の必修科目が用意されているので、興味のない科目で時間を使わされると考えると少し辛いと思います。

MScの利点

MScはテーマを絞って勉強できるので、他の科目に時間を取られずに効率よく勉強する事が可能です。

私の卒業したシドニー大学のMaster of Science (Medicine)は、臨床研究を行うために必要な疫学、生物統計学の授業に絞ったコースになっており、MPHより短期間の1年で学位を取得する事が可能となっています。

もちろんMPHに含まれる授業も選択する事は可能だと思いますが、コースが1年と短く、疫学・統計学の授業をとるだけで1年間があっという間に過ぎてしまうと思いますので、あまりお勧めはできません。

MPHの利点

MPHの利点はどうかというと、シドニー大学の場合1.5年間とMScより1学期分長くコースが設定されており、MScよりも余裕を持って疫学・生物統計学以外の教科も取れるようになっています。

何年か医師として働いていると、徐々に医療制度やシステムにも興味が出てきたり、臨床能力だけでは解決できない問題に遭遇する機会が増えてくると思います。

具体的には、疾患予防のための教育が病院を受診する人以外にほとんどなされない現在のシステムや、医療機関へのアクセスが地域や家庭環境によって違いがあることなどで助けられる命が限られているという事だったりします。

私自身も、脳梗塞を起こした患者の二次予防を内科医の仕事としてやっていましたが、脳梗塞を起こす前の健常者に一時予防を積極的に行っていかなければ、今後患者は増え続ける一方で、医療費の伸びにブレーキをかける事は不可能だと考えていました。

これらの問題に対処するための授業がMPHの授業には用意されています。

いくつかご紹介するとしたら、疾病予防学(Health Promotion)、環境医学(Environmental Health)、医療政策学(Health Policy)、健康アドボカシー(Health Advocacy)などの科目です。

これらは私がMPH在籍中に選択した授業で、これら以外にも興味を惹かれる教科は数えきれないほどありました。

医学部の授業や、普段私が読んでいる医学雑誌では扱わないような内容が多く、普段の自分では考えもしない視点から人々の健康増進を目指す方法論を実践的に学ぶ事ができました。

もし私と同じようなジレンマを抱えながら臨床に携わっているのであれば、MPHに入学し、これらの授業も勉強する事を強くお勧めします。

結論

臨床研究を行うための知識を最短で取得したいのであれば、MPHよりもMScの方がお勧めです。

もし私と同じようなジレンマを感じている方がいるなら、その方にはMPHの入学の方がお勧めです。

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