こんにちは、総合医です。
今回は日本で医師として働いている私が、なぜ海外の大学院に進学したのかについてお話ししてみたいと思います。
近年海外の大学でMBA(経営学修士)を取得したという経営者の方達の話を聞く事も増えてはきましたが、日本に住んでいるとそもそも海外の大学や大学院に進学するという選択肢も浮かばない人がほとんどではないでしょうか?
私ももちろんその一人でした。
海外旅行は学生時代から好きではありましたが、海外の大学に進学しようなどとは夢にも思っていませんでした。
それではなぜ大学院は海外の大学院を選んだのかというと、理由は主に3つあります。
理由1:世界大学ランキング
1つ目の理由として、私が専攻している公衆衛生学の分野では日本の大学院コースが弱いと感じたからです。
他の多くの分野でもそうですが、基本的に公衆衛生学分野で日本は欧米の後追い状態で、研究発表の数も欧米の大学に差をつけられています。
タイムズ・ハイヤーエディケーション2022で東京大学は35位にランクインしていますが、公衆衛生学分野の世界大学ランキングでは東京大学は150〜200位圏内の低い位置にランクされています。(世界大学ランキング:https://www.shanghairanking.com/rankings/gras/2021/RS0402)
公衆衛生学分野の世界大学ランキングでは、英語圏でないスウェーデンのカロリンスカ研究所、デンマークのコペンハーゲン大学、オランダのウトレクト大学などが上位20位以内に入っている事を考えれば、東大が低くランクされているのは英語のせいだけではないという事がわかります。
これらの事から、日本の大学では公衆衛生学はあまり力を入れられていない事がわかったため、少なくとも私の専門分野で日本の大学を選ぶのはあまり得策ではないと判断しました。
もちろんランキングの高い大学に入学したからといって、単純に教育の質が高くなるというわけではないでしょうが、それでも一つの指標として考慮するのは重要でしょう。
理由2:授業内容の豊富さ
2つ目の理由として私が考えたのは、授業内容の多彩さです。
日本の大学院で勉強した先輩に話を聞いてみた所、日本の大学院では決まったカリキュラムを全員が一緒に受けており、多彩な分野の勉強ができるというわけではなさそうでした。
私の当時調べた範囲では、英語圏の大学は学生が多いためか日本の大学よりも教員の数が多く、選べる講座もバラエティに富んでいました。
日本では公衆衛生学修士に進学する人はほとんどが医療従事者のため、医療分野にフォーカスした授業がほとんどのようですが、海外の大学では色々なバックグランドを持った学生がいるためその学生達の専門に沿った授業も行われています。
実際私がシドニー大学で知り合ったクラスメートにはジャーナリスト、NPO団体職員、研究者、医療政策に関わる官僚などが含まれており、それらのバックグラウンドを持った学生向けの授業も多く用意されていました。
大学院ではより多くの分野の勉強をしたいと考えていた私は、海外の大学の方が自由に選択できる授業の幅が広く、自分の希望にあったものを選択できるのではないかと感じました。
色々な分野の専門家がいて、自由に授業を選択できるのは大学を選ぶ上でとても強い魅力の一つです。
理由3:英語力の習得
海外大学院を選んだ最後の理由は、今後の人生のために英語で議論や発表ができるようになっておきたいと思ったからです。
日本の医師はなるべく英語で論文を読んで最新の医学知識を学ぶという文化を持っているのですが、いざ学会で発表したり論文を書こうとすると、一部の医師を除きほとんどの医師が日本語で学会発表したり、日本語で論文を書いたりします。
英語で論文を読む事は新人に要求する割に、英語で発表する発想を持っている医師はかなり限られていて、大学病院勤務でも無い限りは論文を書いたり研究をしようと考えたりもしない医師がほとんどです。
そのため、せっかくなら英語で議論したり、学会発表ができるようになれればいいなと考え私は海外の大学院を探し始めました。
この記事を読んでいる多くの人は学会発表や論文作成など関係ない人ばかりだと思いますが、一般企業でも英語を使える能力がある事はメリットはあってもデメリットはないでしょう。
昇給、転職などでメリットを受ける事があるのであれば、英語を使えるようになって損な事はないはずです。
私自身はオーストラリアの大学院で勉強した後は日本に戻り、日本の医学の発展に寄与できればと考えていますが、医師以外の仕事についている多くの日本人にとっては永住権獲得まで考えて大学を選んだ方がいいかもしれません。
多くのテレビ番組などで何度も言われていることですが、日本はすでに世界トップクラスの高齢化率を誇り、少子化で人口減少の波は止められず、国の経済レベルは今後下がる一方と予想されています。
そして何より、増え続ける高齢者を年金で支えたり、要介護状態の高齢者を支えるために現役世代の社会保険料は上がり続ける見通しです。
国の経済力の低下と社会保険料の増加で現役世代の生活が厳しくなり続ける事を考慮すると、英語を身につけて外国で生活するのも一つの選択肢として悪くはないでしょう。
ちなみにオーストラリアは移民を比較的受け入れている国なので、アメリカやイギリスに比べれば多少永住権を取得しやすくなっています。
それでも条件が多く、条件を満たせない方にとっては難しいですが、少なくとも英語ができるようになる事で会社の海外支店で働けるようになったり、外資系企業に転職して海外に異動できる可能性が出てきます。
外国である程度の額の収入を得ながら数年間暮らせれば、永住権もかなり取得しやすくなるので、長期的な視点で考えれば英語圏での永住権取得は決して夢物語というわけではありません。
海外移住に憧れを持っている人は、ぜひ海外大学・大学院への進学を一度真剣に考えてみてください。
きっとあなたの未来の可能性を広げてくれると思いますよ。
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