臨床医はいつMPHに留学するべきか

公衆衛生学
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こんにちは総合医です。

今回は臨床医の方達が公衆衛生大学院 (MPH) に留学するとしたら、どのタイミングで行けば良いかについてお話ししてみたいと思います。

もちろん勤務先の条件や、家族の状況、金銭的な条件などが絡んでくるので、あくまで数ある意見の一つとして参考にしてもらえたらと思います。

それでは、いくつかのタイミングに分けてそれぞれお話ししてみようと思います。

学生時代

多くの医学生は国試に必要な臨床についての勉強をメインでやっているので、学生のうちから公衆衛生学に興味を持っている方はかなり少数派にはなるでしょうが、一つの可能性として医学生の段階で休学し、MPHに留学してしまうというのはアリだと思います。

留学という観点から考えれば、医学生のうちに留学を経験しておくのは悪くないどころか、一番良いタイミングかもしれません。

大学を卒業して日々の臨床業務に追われてしまうと、なかなか英語の勉強をする時間も取れないですし、休職して留学するにも職場の他の先生達と話し合って許可をもらう必要があるでしょう。

それに比べると、学生時代は比較的勉強する時間がとりやすく、休職する時に周りの先生方に気を使う必要もないので、留学するタイミングとしてはかなり良いでしょう。

しかし、学生時代は金銭的に余裕がない場合が多いと思いますので、留学するにあたっては家族からの金銭的支援を受けるか、奨学金獲得が必須条件となってきます。

医学生がMPHに留学する場合、奨学金を獲得するのはそれほど難しい事ではないと思うので、公衆衛生学・臨床研究に興味を持っている学生さんがいるのであればぜひお勧めします。

大学卒業後

次に大学卒業後にMPHに留学する場合です。

こちらは卒業試験・国家試験が終わったタイミングなので、学生時代と同様に英語を勉強する時間がとりやすくお勧めです。

初期臨床研修が始まってしまうと途中で中断するのは勧められませんので、研修医の始まる前というのが良いタイミングだと思います。

この時期から公衆衛生学や臨床研究に興味を持っている方はかなり稀だとは思いますが、留学時期としてはかなりお勧めできます。

研修医終了後

研修医が終了した段階で、その後の進路について悩んでいる人は実は結構いるのではないかと思います。

自分がどの診療科に進むべきか悩む研修医の先生方には、一度MPH留学を間に挟んで考える時間を作るのもいいかもしれません。

研修医の間に抄読会などで論文を読む機会が増えて臨床研究に興味を持ったり、医師の多様な働き方(例:医系技官として政府機関で勤務、WHOなどの国際機関で働く等)に興味を持った場合は特にMPHはこの時期にお勧めです。

この時期ならある程度金銭的な余裕が出てきている頃でもあるでしょうし、医師の働き方の選択肢が病院での臨床業務だけではないという事にもある程度理解が深まってきていると思います。

今後MPH留学を足掛かりに海外に臨床留学で行くことを目指している方達にもこのあたりが現実的にお勧めです。

英語学習は早く取り掛かった方が良いというのもこの時期に留学をお勧めする一つの理由です。

専門医取得後

留学のタイミングとして一番多いのは専門医取得後だと思います。

留学後は日本に戻ってきて臨床業務に戻る事を考えている先生方が最も多いと思うので、専門医を取るまでは途中にブランクを開けない方が良いと考える先生は多いでしょう。

私個人としては、MPHだけの1、2年間の留学で帰国するならば、必ずしも専門医取得を待つ必要はないと考えています。

MPH留学に興味を持っている人は必ずしも専門医を最短で取る必要はないはずでしょうし、1、2年で帰国して専門医試験受験時期に間に合えば専門医取得が遅れる事もそもそもありません。

それよりは、MPHで疫学、生物統計学の知識を得る事で、専門医取得後にスムーズに研究に進んでいけるようになる可能性があるのでいいかもしれません。

ただ、何度も言うように語学の勉強開始は早いに越した事はないので、専門医取得を理由に留学を遅らせるのは慎重に考えた方が良いと思います。

大学の医局に所属している方であれば、専門医取得後に大学院入学の流れになる方が多いと思いますが、専門医取得時期が1、2年遅れる事と、留学時期が遅れる事のデメリットをしっかりと天秤にかけて考える必要があると重みます。

海外大学院での博士課程を考えている方

海外大学院で博士課程にも進学してしまおうと考えている方には少し話が変わってきます。

臨床研究で博士課程に進学する場合には、国や大学にもよりますが、卒業するのに最低3、4年の年月がかかります。

MPH留学と合わせると最長6年程度かかります。

診療科によっては専門医の取得に時期的な制限がある場合もあると思うので、この場合は専門医を先に取得する事を強くお勧めします。

特にJ-Oslerが始まる前の認定医資格を持っていて、これから総合診療専門医を受験する方は、まず専門医を取得してからの留学が圧倒的にお勧めです。

おそらく救済措置で認定医の認定時期の延長は可能でしょうが、専門医資格の管轄が日本内科学会から日本専門医機構に移ってしまうと、今後どのように扱われるのか不透明なので、救済措置が適応されない可能性があります。

そして、MPHだけで帰国する事を念頭に置いている方にもここは注意が必要です。

私自身も当初はMPHでの留学だけで、その後は帰国して元々勤めていた病院に戻って臨床業務を再開する予定でした。

しかし、MPHは医師のキャリアパスに例えれば医師免許取得程度の段階です。

基本的な疫学、生物統計学の知識はあるけれども、臨床研究の実践的な知識や経験が全くない状態でMPHは終了します。

そのため、MPHを取得したからといってすぐに臨床研究を日本で行えるようになるわけではありません。

特に元々研究の経験がない方や、市中病院勤務で周りに臨床研究を指導できる人がいない場合は、私のようにMPHが終わった段階でそのまま博士課程進学を考える可能性があります。

そのため、そのリスクも考慮に入れると、初期研修が終わった段階で留学に行くか、もしくは専門医資格を取得した後が最も安全な選択肢になるのではないかと思います。

いかがだったでしょうか?

今回の記事がMPH留学を考えている臨床医の先生方の判断の助けに少しでもなれば幸いです。

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