こんにちは、総合医です。
大学院博士課程での留学を考えている人で、申し込み方法に戸惑っている人はいませんか?
海外の大学院、特に研究を目的とした博士課程の留学は申し込みの方法が少々特殊です。
先輩などからの情報がなければなかなか十分な情報が得られないと思いますので、今回は博士課程出願の方法についてお話ししようと思います。
頻繁に聞かれる質問に沿ってお答えしていきたいと思います。
どうやって指導教官を決めるの?
まず初めの疑問は指導教官を決める方法ですね。
修士課程まででほとんど研究を行ってこなかった人達にとって、いきなり指導教官を決めろと言われても困ってしまいますよね。
自分の中で興味のある研究テーマがすでにある人はその分野の教官に絞って考えれば良いですが、これまで授業を受けてきただけなのに、いきなり研究テーマと言われても困ってしまうと思います。
しかし、自分がこれまで受けてきた授業の中で興味を持った分野などはあると思います。
指導教官はその分野から選べばいいのです。
具体的にいうと大学のホームページで、博士課程申し込みのページにいきましょう。
ホームページ上では申し込みの手順が説明されていると思いますが、まず第一に指導教官を見つけてくださいと書かれており、その横に大学研究者検索画面へのリンクが貼られている事がほとんどです。
例として私の母校のシドニー大学のホームページを見てみると以下のようになっています。
こちらが「博士課程申し込み」でGoogle検索した時に最初に出てくるページです。
下の方にスクロールしていくと、指導教官を探すページのリンクが出てきます。
赤矢印で示した所が指導教官の検索ページへのリンクです。
ここから次のページに移動する事が可能です。
このページで学部 (Faculty) を選んで検索ボタンを押すと以下の結果が得られます。
今回は私の分野のHealth Scienceで検索をかけてみた所、305人の大学研究者がヒットしました。
この中から自分の興味に最も近い分野の先生を選んで連絡をとりましょう。
各研究者には個人ページが用意されており、研究テーマや、これまでの業績、指導経験などの詳細が記載されており、指導教官を選ぶ際に役に立つでしょう。
研究者によっては、すでに多くの学生を受け持っており自分の指導教官になってもらえない場合もあります。
そのため、指導を受け持ってもらえる研究者に当たるまで根気強く当たっていく必要があります。
ちなみにオーストラリアは教授や准教授まで上り詰めた人達は気さくで人当たりの良い人が多いので、無下に断られるケースは少ないように感じます。私は何人かの教授に連絡をとりましたが、メールは必ず返ってきましたし、受け持てない場合は、同じチームの別の研究者や似たような研究テーマを持っている研究者を紹介してもらったりしました。
どうやって研究テーマを決めるの?
これは指導教官探しの時にも少し触れましたが、自分が修士課程までで学んだ中から興味を持てる分野で研究テーマを探すのが良いでしょう。
すでに確固とした研究テーマがある人はそのままそれを追求すれば良いでしょうが、そうではない時は基本的に指導教官のテーマをそのまま自分の研究テーマとしましょう。
研究者の最初の段階で自分の研究テーマを確立する事は難しいと思いますので、自分の指導教官の研究テーマを使って研究の方法を学んでいくのが博士課程の学生にできるベストな選択だと思います。
指導教官の研究テーマは、研究者の個人ページを見ることで確認できます。
どんな研究ができるのかわからないのにどうやって研究計画書を作成するの?
指導教官選びと同時に研究計画書で、これがもう一つの大きな問題でしょう。
修士課程までの間に研究経験があれば書き方はある程度わかると思いますが、全く経験がない人にとってはなかなか大変な作業になると思います。
基本的には指導教官になってくれる研究者に添削をしてもらって、研究計画書を作成するのがベストですが、指導教官に最初に見てもらう時に研究計画書を用意しておくに越したことはありません。
研究計画書はグーグルで検索すれば雛形が手に入るのですが、基本的には論文のIntroduction、Methodsまでを、研究を始める前の段階で予定しているように書いたものになります。
自分が指導教官をお願いしようと考えている研究者の過去に書いた論文を見てみてください。
その論文のIntroductionとMethodsのセクションを真似て研究計画書を書いてみると、ある程度整った研究計画書が書けるのではないでしょう。
最新の論文であれば同じ参考文献を自分の研究計画書にも使用できますし、もし使えなかったとしても、Google ScholarやConnected Papersのような文献検索ツールを利用して自分の参考文献を見つけてこれるので、先人の論文を参考にするのはとても良い手段です。
Connected Papersの使い方については別記事にもまとめてあるので、参考にしてみてください。(参考:関連文献検索に有用なConnected Papersとは?)
ちなみに、指導教官の書いた過去の論文をいくつかざっと確認してみる事で、その研究チームが普段行っている研究の方法や、得意な研究手法がわかります。
自分が行いたい研究がもしわかっている場合は、自分が申し込もうと考えている研究チームの過去の論文を確認して、自分の研究でもその手法が利用できそうか考えてみると良いでしょう。
研究の実現可能性がグッと上がります。
そして最後に、博士課程入学前に作成する研究計画書は、あなたの研究に対する理解度を測る意味合いが強いので、入学後に実際にその研究をできるかはわかりません。
実際実現可能性が低い研究計画書を作成していたとしても、研究の全体像や研究手法に対する基本的な理解がある事を確認できれば、実現不可能な実験計画を書いていても合格できます。
その場合は博士課程入学後に指導教官と研究計画を改めて話し合う事になります。
博士課程でもらえる奨学金ってどんなものがあるの?
これは国や大学によっても大きく異なる部分だと思いますので、オーストラリアの場合を想定してお話しします。
オーストラリアの大学院博士課程では、オーストラリア人は基本学費はタダで、生活費などが奨学金として支給されます。
留学生はオーストラリア政府が用意している奨学金を獲得できなくても博士課程に入学する事ができますが、入学申し込み時に学費をどのように払うつもりかしっかりと確認されます。
大学側としても卒業見込みのない学生を受け入れたくないというのが本音でしょう。
そのため、入学申し込みの際にどの奨学金を獲得しているのか?貯金で賄えるのか?金銭的サポートをどこから受けるのかを確認されます。
留学生に対してもオーストラリア政府が支給するRTP (Research Training Program) という奨学金制度が用意されており、限られたごく一部の留学生が獲得する事ができます。
RTPを獲得した学生は学費が全額免除で、月30万円程度の生活費も支給されます。
しかし競争率はかなり激しいので、基本的にほとんどの留学生は自国の奨学金を獲得してオーストラリアの大学に留学しています。
博士課程の奨学金はどのくらい難しいの?
上記でお話ししたRTPは、獲得するのが非常に難しいと言われています。
具体的に何%の学生がこの奨学金を獲得できるのかは明示されていませんが、獲得は非常に難しく、留学生のうち本当に優秀なほんの一部の学生にのみ支給されると言われています。
ただ、RTPの仕組みは、大学ごとに国から予算が割り振られて、各大学でRTP支給学生を選定するという形になっているので、競争率は大学によって異なっていると思います。
シドニー大学やメルボルン大学のようなグループ8と呼ばれている競争率の高い大学では、学生数も多いのでRTPを獲得するのは非常に難しいでしょう。
しかし、それ以外の大学で学生数も少ない所であれば、成績が多少低くても競争率が低く、RTP獲得の可能性は上げられるかもしれません。
博士課程学生用の奨学金はRTPだけに限られません。
RTP以外にも学生の生活をサポートするための奨学金が大学によって数多く用意されており、基本的にどの奨学金もRTPより獲得のハードルがかなり低いです。
おそらく申し込み可能な奨学金に全て申し込めば、2、3個合格する事ができるでしょう。
しかし、RTP以外の奨学金は1回のみの10万円の支給や、生活費として月5万円を1年間支給など金額が限定的なものがほとんどです。
そのため、自国の奨学金と組み合わせて取得している学生が多いようです。
奨学金をもらいやすくなる方法はあるの?
RTP奨学金の獲得は、学部生の奨学金と異なり、必ずしも成績のみで決まるわけではありません。
これは博士課程の学生の目的が研究をして論文を発表することを目的にしているからだと私は考えています。
良い論文が書けるかどうか、論文が良いジャーナルに掲載されるかどうかは学生の過去の成績よりも、良い結果が出やすい研究テーマかどうか、所属する研究チームの指導教官達が優秀かどうかにもかかってきます。
研究テーマによってはインパクトの小さい研究しかできない場合もありますし、研究チームがそれまでに大型の研究費を何度も獲得できているような場合には今後もインパクトのある研究が行われる可能性が高いと期待される事が多いです。
私自身学部時代の成績や修士課程の成績はあまりよくありませんでしたが、博士課程ではRTP奨学金を獲得する事ができたのは、研究チームが大きかった事、研究計画書が具体的で実現可能性がかなり高かった事が影響しているのではないかと思います。
必ずしも再現性があるかはわかりませんが、予算をたくさん持っている研究チームに申し込む事と、研究計画書をなるべく詳細に記載することがRTPの獲得可能性を高くする秘訣ではないかと考えています。
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